寺院概要


沿革
今より400年以上前、慶長の頃までは長崎に於いてはキリスト教の勢いが盛んでありました。現在の本蓮寺の所在地には、サンラザロ病院といいうハンセン氏病の病院が建てられ、サン・ジョアン・バプチスタ教会も建てられました。当時、この地の領主である大村純忠は日本最初のキリシタン大名でした。
やがて大村の領主は純忠の子喜前(よしあき)になりましたが、喜前は加藤清正公との縁もあり、法華経の信者でありました。折しも加藤清正功は、『妙』『法』『蓮』『華』『経』の5文字に因み、お題目九州五山の建立を発願。後にこの5文字をあてた五ヶ寺が完成いたします。『妙』は熊本の本妙寺、『法』は大分鶴崎の法心寺、『蓮』は長崎の本蓮寺、『華』は水俣の法華寺、『経』は大村の本経寺です。喜前は大村に本経寺を建立しました。
その第2世である本瑞院日惠上人が、本経寺をその徒弟なる日忠に委ね、決然として長崎に法華経を広めようと来られたのが、元和2年(1616)の事。『日夜罵詈を受け甚だしきに至りては瓦礫を投じられた』(長崎市史)と示され、苦労を重ねられましたが、不屈不撓ますます民衆の教化に努めました。
この時、大村の10人の信者さんを同道しました。これは、キリシタンでいっぱいの長崎で布教するわけですから、身に危険が及ぶのを防ぐためでありました。加藤清正公より兜を頂いたのも、投石に備えたものでした。
山号は『聖林山』(しょうりんざん)といいますが、これは開基本瑞院日惠上人が幼少の頃、清正公の母君である聖林院様に撫育された時期があり、その恩を想い、『聖林』を以て山号と為したのです。
時の将軍徳川秀忠公より脇差を拝領した日惠上人は、これを守り刀として布教にあたりました。当山の日蓮聖人座像も、江戸より箱根の関所を通った記録が残っており、はるばる長崎の地まで大切に運ばれてきたことがうかがえます。
元和6年(1620)、聖林山本蓮寺は開創されました。この400年の間に、に本蓮寺は2度の大火を経験しました。最近は原爆による災害ですが、日蓮上人像は2度ともその難を逃れることができ、戦後補修を施しましてお座りになっています。
この400年の激動の時代をしっかり心に刻まれたことでしょう。その上で、現在の世を静かに見つめる瞳が、当山本堂にあって輝いているのです。

納骨堂にまつられている開山上人(左)と聖林院様(右)
日蓮宗について
日蓮宗とは、身延山を信仰の中心として、日蓮聖人の教えを継承する宗団です。
日蓮聖人は、お釈迦様が説かれた【法華経】を第一にされ、南無妙法蓮華経という【お題目】の信仰こそが末代の人々を救う唯一の方法であることを明らかにされました。


本蓮寺の銅像様について
昭和54年、日蓮聖人第700回遠忌記念として建立されました。製作をお願いしたのは、富山県高岡市の老師製作所です。当山から長崎の港を睨んで、長崎の安寧を引き受けておられるかのようです。

江戸から箱根の山を越えて長崎へ
〜本蓮寺の日蓮聖人座像〜
本蓮寺建立の頃から鎮座されている日蓮聖人座像。本瑞院日惠上人が徳川秀忠公から拝領し、布教の際に守り刀とした脇差と共に、江戸から箱根の関所を通ってはるばる長崎の地に運ばれました。
江戸と昭和、2度の大火を免れ・・・
この座像は、2度の大火を経験されています。1度目は元禄11年(1698)4月23日に起こった元禄の大火(末次火事)。未明に興善町の末次七郎兵衛宅から出火し、強風によって大火となり、午後4時に鎮火するまで約12時間も燃え続けたそうです。折しも、座像は本堂の工事のために別の場所に移していたため、ご無事だったといわれています。
2度目は、昭和20年8月9日、午前11時2分、原子爆弾が投下された時です。その威力はすさまじく、一撃で死者73,884人、重軽傷者74,909人、合わせて148,793人もの犠牲者を出しました。被曝直後、本蓮寺の本堂は傾き、庫裡は全壊しました。その中にあって、当時の住職の妻である坊守が血だらけになって座像を助け出し、裏山を倒けつ転びつ、山の上まで避難したそうです。ですから、400年の昔から、静かに私たちを見守っておられるのです。

平和を祈り、響く音色
〜本蓮寺の鐘楼〜
現在の鐘楼は、昭和49年9月9日に再鋳されたものです。朝7時と夕方6時に毎日鐘を撞いています。
当山33世梅洞院日浩上人の時、第2次世界大戦中で日本は金属を供出しなければなりませんでした。そこで、本蓮寺は梵鐘を出し、階段の手すりを外して、同でできた燈籠までも供出しました。長い階段の手すりがなくなってしまったため、ご高齢の方がお参りする際はきっと難儀されたことでしょう。
再鋳された鐘楼は、そんな時代が二度と来ないようにとの願いを込めて、8月9日の原爆の日や8月15日の終戦の日、そして毎日の時報として、平和を祈り、重厚な音色を響かせています。






















